予防接種

お母さん方がご心配な件に関しては、日本小児科学会HPの「こどもの救急」で、
チェックリストを用いた受診へのアドバイスを見ることができます。ご参照ください。

こどもの発熱とその対応

図1は千葉市の夜間小児救急医療体系です。千葉市立海浜病院内に夜間救急初期診療部(夜救診)があり、ここで私たち医師会の会員等が交代で診療にあたっています。入院が必要な患者さんは2次医療機関(千葉市内病院小児科)にお願いするシステムをとっています。

図1
図1

この夜救診を受診する動機となった症状をみると、圧倒的に発熱が多いのです。
なぜ、このように多いのか考えて見ますと、
  1.重篤な病気が隠れているのではないか?
  2.熱により、脳障害を来たすのではないか?
といった心配はもちろんのこと
  3.熱で苦しんでいる子を早く楽にしてあげたい
という親心があるのではないかと考えます。熱で脳障害を来たすか否かですが、かぜ症候群・肺炎などでは、上気道~肺組織等が炎症をきたし、その結果高熱、上気道~肺組織のダメージを来たしますが、脳障害は起こりません。
発熱時に抗菌薬(抗生物質)を所望されることが少なからずありますが、発熱でもっとも多いかぜ症候群を例にとって考えてみましょう。かぜ症候群はウイルスによって起こりますが、抗菌薬の有効性は認められておりません(表1)。

表1
表1

抗生物質の有効な疾患は図2に示しますが、赤字で示した部分のみでごく限られた疾患のみに有効です。

図2
図2

したがって、救急における治療は、病気の原因に対してではなく、そのときの症状を軽減するための治療である対症療法が主になります。解熱剤を中心とした処方になりますが、解熱剤で注意していただきたい点があります。小児で国際的に安全性が定まっているのは、アセトアミノフェン(商品名;カロナール、アルピニー坐剤、アンヒバ坐剤など)とイブプロフェン(商品名;ブルフェン、ユニプロン)の2剤だけです。家にある解熱剤を使用する際にはこの点を確認してから使用してください。

時にご両親に次のような質問をすることがあります。

  自分だったら
     寒い中救急受診しますか?
     解熱剤を使い休んでいますか?

ご両親の大部分の方は後者と答えられます。しかし、わが子になると心配のあまり前者を選択する場合が多いようです。何故、このような質問をするかというと、病院に勤務していたときに救急受け入れを担っていました。その頃の経験ですが、心配のあまり寒いところを繰り返し救急受診し、こじらせていると考えられる症例に少なからず遭遇しました。
つまり、「上手な病院へのかかり方」というキーワードが出てくるのです。時間外に発熱した場合には、次のようなことを行って経過をみてください。

説1

これで全身状態の変化がなければ翌日暖かい時間帯に受診すればよいわけです。とはいっても、病気は進展する場合もあります。気道感染でみてみますと、図3のようになります。

図3
図3

風邪は多くの場合対症療法で治癒しますが、一部は気管支炎、肺炎に進展してしまいます。したがって、家で看護する場合の注意点は病気の進展を意味するサインを見落とさないようにすることです。気道疾患では呼吸困難のサインの有無ということになりますが、乳児・年少児では息が苦しいと訴えることが出来ません。したがって、両親、われわれが判断する必要があります(図4)。呼吸数が多い(多呼吸)、小鼻をピクピクする(鼻翼呼吸)、喉の部分がぺこぺこする(陥没呼吸)のいずれかが認められるようになったら、待たないで救急受診したほうが良いでしょう。

図4
図4

このほか、あまり待たないで救急受診したほうが良い場合を列記します。

説2 説3

千葉県小児科医会では、上記のように救急受診する目安のガイドとして分かりやすく解説した冊子を作成しています(図5)。
クリニックにお尋ねください(冊子は一部40円です)。

図5
図5

この冊子の発熱の項を紹介しておきます。

熱が出たら

「発熱」とは、38℃以上を言います。

チェックリストA
 (1つでもあった場合は、医療機関への受診をお勧めします)
 □ 生後3か月になっていない
 □ 元気がなく、ぐったりしている
 □ 水分が摂れないで、おしっこの回数が少ない

解説A

  1. 生後3か月になる前の赤ちゃんがお熱を出したときは重い細菌感染症である可能性が高いですから、早めに医療機関を受診しましょう。
  2. お熱のことよりも他の症状に気をつけましょう。水分が充分に摂れなくておしっこが出ない、嘔吐が続く、顔色が悪い、元気がなくぐったりしている、意識がはっきりしない、あるいは痙攣を起こしてしまった場合などには早めに医療機関を受診しましょう。

チェックリストB
 (Bだけの場合には、以下の説明を読んで対処してください)
 □ 元気はあるが、39~40℃の高熱なので頭がおかしくならないか心配だ。
 □ 意識はあって顔色も悪くないが、ブルブルふるえて、痙攣が心配だ。
 □ 解熱剤を使ったのに熱が下がらない、一度下がったけどまた上がってしまったので
   心配。

解説B

  1. 熱が高いために頭がおかしくなることはありませんので心配しないで下さい。こどもは風邪の熱でも40℃になることもあり、一般に熱の高さと病気の重さとはあまり関係ありません。
  2. 熱の上がり際にブルブルふるえることがあります。これは寒気による「震え」で「けいれん」とは違います。意識がなくなったり、眼球が上向きになっていたりしなければ心配ありません。
  3. 寒気でブルブルふるえる場合には保温をして寒気がおさまってから薄着にし、汗をかいたらまめに着替えさせましょう。お熱でつらそうでしたら、まず氷枕で頭や首を冷やしたり、タオルで巻いた氷のうでおでこを冷やしたりしましょう。それでも効果がないときには、脇の下や股の付け根を氷のうで冷やしたりするのも効果かあります。
  4. 解熱剤は、生後6か月以上のお子さんであれば38.5℃以上で、しかも元気がない場合は使用してもよいでしょう。でも、熱を出すことでウイルスや細菌を攻撃しているとも考えられますので、元気であったり良く寝ているのに、解熱剤を使う必要は全くありません。
  5. 解熱剤を使って1℃下がれば効果があったと考えてください。急激に平熱まで下げたら体もビックリしてしまいます。解熱剤を使う間隔は6~8時間以上は開けましょう。一度下がったけど直ぐに上がった場合などには、脇の下や股の付け根を氷のうで冷やしたりしましょう。

*以上は、以前に千葉県小児科医会がお母さん向けに行った講演会内容の一部です。


くろさきこどもクリニック